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長引く咳の診断・治療について

[2019.09.07]

「咳がなかなか止まらない」、「咳で夜も眠れない」などの症状でクリニックを受診される方が増えています。咳は本当につらいものです。症状がひどい時や、経過が長い時には、原因を調べた上で、適切な治療を行う必要があります。

そもそも咳は「基本的には気道内に貯留した分泌物や吸い込まれた異物を気道外に排除するための生体防御反応である」とされています(咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019より)。

一般的に気道に炎症が生じると、異物を感知するセンサーが過敏になり咳が出やすい状態となるため、ホコリや温度変化など、ちょっとした刺激でも咳込むようになります。さらに、気道の表面は粘液で潤されていますが、気道に侵入したウイルスや細菌は、この粘液にからまり排出されます。気道が乾燥すると、粘液の粘り気が増して痰のからみがひどくなるとともに、気道の過敏性も増すと言われていますので、咳や痰が出る時には「部屋を乾燥させない」、「飴を舐める」、「マスクをする」、「水分を適度に補給する」等により気道を潤すことが大切です。

咳は持続期間により、3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に分類されます。このような持続期間を設けることにより、咳嗽の原因疾患がある程度推定できます(咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019より)。すなわち、急性咳嗽の原因の多くは感冒、急性咽喉頭炎、急性気管支炎、肺炎、インフルエンザなど気道の感染症であり、持続期間が長くなるにつれ感染症の頻度は低下し、慢性咳嗽においては感染症そのものが原因となることはまれで、咳喘息、アトピー咳嗽、百日咳、マイコプラズマ、副鼻腔気管支症候群、逆流性食道炎、慢性気管支炎などが原因と言われています。これら長引く咳の診断・治療に対しては、診断の第一ステップとして「聴診などによる胸部身体所見」と「胸部レントゲン」があります。これは、咳の原因として肺癌、結核、間質性肺炎、心臓の病気など、他の疾患を除外するためです。さらに、肺機能検査、呼気一酸化窒素(FeNO)濃度測定、モストグラフ(呼吸抵抗測定)などの呼吸機能検査や血液検査などを行います。

検査をしたにも関わらず原因がはっきりせず、症状がなかなか改善しない遷延性・慢性咳嗽の場合には、何かしらの投薬を行いながら経過をみることもあります。痰のからみが少ない咳の場合には、頻度の高い「咳喘息」を疑い、気管支拡張剤、吸入ステロイド、抗アレルギー薬を投与し経過をみることがあります。一方、痰がからむ咳の場合には「副鼻腔気管支症候群」を疑い、去痰剤やマクロライド系などの抗菌薬を投与して反応を見たり、痰の分泌を抑える吸入薬を吸って経過をみることもあります。また、高血圧の薬などの副作用で咳が続く場合もありますので、内服中の薬のチェックも大切です。

咳の原因は多種多様です。アレルギー疾患の増加、黄砂などの影響による環境の変化などもあり、すべての年代の方が経験する症状と言えます。咳でお困りの方は遠慮なくご相談下さい。

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