舌下免疫療法
舌下免疫療法(SLIT:Sublingual Immunotherapy)について
◆ 舌下免疫療法とは?
舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ舌の下から吸収させることで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を和らげていく治療法です。
従来の治療(抗アレルギー薬)は症状を抑える対症療法であるのに対し、舌下免疫療法はアレルギー体質そのものを改善する可能性がある唯一の根本治療とされています。
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◆ 治療のメカニズム
舌下に投与されたアレルゲンは、口腔内の免疫細胞(樹状細胞)を介して免疫系に働きかけます。これにより、アレルギー反応を引き起こすIgE抗体の産生が抑えられ、**アレルギーを抑制する制御性T細胞(Treg細胞)**が増加すると考えられています。
これにより、
•過剰な免疫反応が鎮まり、
•症状の軽減、
•長期的には完治に近い状態を目指すことができます。
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◆ 対象となるアレルゲンと薬剤名
現在、日本で保険適用されている舌下免疫療法の薬は以下の2種類です:
スギ花粉→シダキュア(投与開始時期の目安:花粉の非飛散期である6月〜12月頃)
ダニ(通年生)→ミティキュア(1年を通して開始可能)
※当院では15歳未満の投与は行っておりません
◆ 治療の流れ
1. アレルギー検査
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血液検査(特異的IgE測定)でアレルゲンを特定します。
2. 医師による説明と同意
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治療効果、副作用、治療期間などを説明し、同意を得ます。
3. 初回服用(クリニック内で実施)
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万が一のアレルギー反応に備え、医療機関内で安全を確認しながら服用。
4. ご自宅での継続投与
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毎日1回、舌下に薬を置き、1〜2分保持後に飲み込みます。
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通常は3〜5年の継続が推奨されます。
5. 定期通院
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月に1回程度の診察で、効果や副作用の確認、薬の処方を行います。
◆ 治療の効果と実績
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スギ花粉症に対しては、約70〜80%の患者さんで症状の軽減が見られます。
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ダニアレルギーに対しても、継続することで年々症状が軽くなり、薬の使用量が減る傾向にあります。
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一部の患者では、治療終了後も数年間効果が持続することが報告されています。
※個人差があり、効果が限定的な場合もあります。
◆ 副作用・注意点
よくある副作用(初期に多い):
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口の中のかゆみ、腫れ、違和感
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喉のかゆみ、軽い咳
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頭痛、倦怠感(まれ)
多くは数日〜数週間で軽快し、そのまま継続可能です。
まれに起こる重大な副作用:
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全身性アレルギー反応(アナフィラキシー)
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呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下など
→ 初回服用は必ず医療機関で行い、その後も異常があれば速やかに受診してください。
◆ 舌下免疫療法が向いている方
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抗アレルギー薬だけでは十分な効果が得られない
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毎年の花粉症シーズンに強い症状が出る
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薬をなるべく使わずに済む体にしたい
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小児期からのアレルギー体質を改善したい(5歳以上)
◆ 舌下免疫療法ができない/慎重を要する方
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妊娠中または妊娠予定の方
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重症の気管支喘息
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がんや自己免疫疾患などをお持ちの方
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他の治療薬との併用でリスクがある場合
※個別に医師の判断が必要です。
◆ よくある質問(Q&A)
Q. 治療を始めるのに最適な時期は?
A. スギ花粉症の方は、**花粉が飛んでいない時期(6〜12月)**に開始するのが安全で効果的です。ダニアレルギーは通年で開始可能です。
Q. 毎日続けられるか心配です。
A. 一度習慣になると数分で終わるため、多くの方が問題なく継続できています。飲み忘れはアプリやカレンダーでの管理がおすすめです。
Q. 治療途中で中断したらどうなる?
A. 数日間の中断なら再開可能ですが、1週間以上空いた場合は初回と同様に医療機関で再投与が必要です。勝手に中止せず医師にご相談ください。
🌿 当院での取り組み
当院では、15歳以上の患者さまに対して、舌下免疫療法を提供しています。
治療の適応判断から、治療中のフォローアップまで丁寧に対応いたします。
治療をご希望の方、ご検討中の方はお気軽にご相談ください。