気管支喘息
・気管支喘息とは
・病態と原因
・疫学・リスク因子
・診断
・治療
・予防と管理
・当院の対応
気管支喘息(bronchial asthma)は、気道に慢性的な炎症が持続する疾患であり、気道過敏性の亢進(ちょっとした刺激でも気道が収縮しやすくなる状態)により、反復する咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難、胸部圧迫感などの症状を引き起こします。症状はしばしば夜間や早朝に悪化し、自然に軽快するか、治療によって改善します。
病態と原因
喘息の本態は、アレルギー反応を基盤とした慢性炎症性疾患です。気道の上皮細胞や好酸球、肥満細胞、Th2細胞などが関与し、サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)を介した免疫応答が気道の過敏性や粘膜浮腫を引き起こします。
原因(誘因)としては、以下のものが知られています。
• アレルゲン:ダニ、ハウスダスト、花粉、ペットの毛など
• 感染症:風邪などのウイルス感染
• 環境因子:喫煙、寒冷刺激、大気汚染
• 運動・感情:激しい運動やストレスも発作を誘発することがあります
疫学・リスク因子
•日本における推定患者数:約500万人
•小児喘息:約7〜10%の有病率(小学校低学年に多い)
•成人喘息:約5%前後。40歳以上の新規発症も多く、COPDとの鑑別が必要
【主なリスク因子】
•アトピー素因、家族歴
•ダニ、ハウスダスト、カビ、動物(特に猫)
•受動喫煙、空気汚染(PM2.5など)
•気温差、運動、感情ストレス
•職業曝露(塗装業、農業、医療従事者など)
診断
診断は、臨床症状の聴取と呼吸機能検査を中心に行います。
• 問診・聴診:典型的な発作や喘鳴の既往を確認
• 呼吸機能検査(スパイロメトリー):可逆性の気流制限を評価
• ピークフロー測定:日内変動の把握に有用
• 呼気一酸化窒素(FeNO)測定:好酸球性炎症のマーカー
• アレルギー検査:血清IgE、RAST
治療
喘息の治療は、「長期管理」と「急性発作の対処」に分けられます。
1. 長期管理(コントローラー)
• 吸入ステロイド薬(ICS):基本治療。気道炎症を抑える
• ICS/LABA配合剤:中等症以上に使用
• LTRA、テオフィリン、抗IgE抗体(オマリズマブ):補助的治療
2. 発作時治療(リリーバー)
• 短時間作用型β2刺激薬(SABA)吸入:気道の一時的拡張
• 全身性ステロイド(経口/点滴):中等度以上の発作時に使用
治療はガイドライン(日本喘息学会の「喘息予防・管理ガイドライン」など)に準拠し、重症度に応じて段階的に薬剤を選択します。
予後と管理
多くの患者様は適切な治療により発作の予防と生活の質(QOL)の維持が可能です。ただし、治療中断や自己判断による薬の中止は再発や重篤な発作の原因になります。
• 定期的な受診・検査による状態の評価
• 吸入指導の徹底(デバイスの正しい使い方)
• アレルゲン対策(寝具の工夫、ペットとの距離など)
• 禁煙の徹底
当院の対応
当院では、最新の呼吸機能検査、FeNO測定、アレルギー検査を完備し、患者様一人ひとりの状態に応じた個別の治療を行っています。吸入指導や日常生活のアドバイスも丁寧に行っています。