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慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

〜タバコが引き起こす“見えない肺の老化”〜

■ COPDとは

COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease/慢性閉塞性肺疾患)は、主に喫煙を原因とする肺の慢性疾患で、気管支や肺胞に炎症や構造的変化が生じ、空気の通り道が狭くなる「気流制限」が慢性的に続く病気です。

この病気には2つの主な病態が含まれます:

慢性気管支炎:咳や喀痰(たん)が3か月以上、2年以上にわたって続く状態。気道に慢性の炎症が起こっています。

肺気腫:肺の末端にある「肺胞」が破壊され、ガス交換効率が著しく低下する状態です。

COPDは進行性の病気で、自然に良くなることはなく、治療しなければ次第に呼吸困難が悪化し、日常生活や生命に重大な影響を及ぼします。

■ 原因と危険因子

最も大きな原因は喫煙(能動喫煙・受動喫煙)であり、日本のCOPD患者の約90%以上が喫煙歴ありとされています。タバコの煙に含まれる有害物質(ニコチン、タール、酸化ガスなど)が気道粘膜を長期的に損傷し、慢性炎症や肺胞破壊を引き起こします。

【主な危険因子】

•現在または過去の喫煙(紙巻たばこ、加熱式たばこ、葉巻などすべて含む)

•長期の受動喫煙

•粉じんや化学物質への職業的曝露(例:工業作業者、炭鉱労働者、農業従事者など)

•室内大気汚染(薪ストーブ、換気不良な調理環境)

•α1-アンチトリプシン欠損症などの遺伝的素因(非常に稀)

■ 症状

COPDの症状はゆっくりと進行するため、患者さんご自身が「年齢のせい」と思い込み、発見が遅れることが少なくありません。

【典型的な症状】

•労作時の息切れ(初期は坂道や階段で感じる)

•持続する咳(特に朝方)

•粘っこいたんが毎日出る

•呼吸音がゼーゼー・ヒューヒュー(喘鳴)

•疲れやすさ、運動時の持久力低下

•重症化すると安静時にも呼吸困難を自覚するようになります

また、**肺炎やインフルエンザ、風邪などをきっかけに症状が急激に悪化する「増悪(ぞうあく)」**を繰り返すことも特徴です。

■ 診断

COPDの確定診断には**呼吸機能検査(スパイロメトリー)**が不可欠です。

【診断に用いる主な検査】

1.スパイロメトリー(肺活量測定)

•「1秒量(FEV1)」と「努力肺活量(FVC)」の比(FEV1/FVC)が70%未満の場合、COPDが疑われます。

•気管支拡張薬吸入後の検査で、可逆性の有無を確認します。

2.胸部レントゲン・CT

•肺の過膨張や肺胞の破壊、肺気腫の分布などを確認します。

3.動脈血ガス分析、酸素飽和度測定(SpO2)

•酸素交換能の評価。

4.血液検査(必要に応じて)

•α1アンチトリプシン欠損症のスクリーニング、炎症マーカー、感染の有無など。

■ 重症度分類(GOLD分類)

GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)による重症度評価は、**FEV1(1秒量)**の値により以下のように分類されます。

•軽症(GOLD 1):FEV1 ≥ 80%

•中等症(GOLD 2):50% ≤ FEV1 < 80%

•重症(GOLD 3):30% ≤ FEV1 < 50%

•最重症(GOLD 4):FEV1 < 30%

加えて、息切れの程度(mMRCスケール)や増悪の回数も重症度評価に組み込まれます。

■ 治療

● 禁煙治療

最も重要な治療。禁煙により進行速度を遅らせ、予後を大きく改善します。

当院では禁煙外来にも対応しております。

● 薬物療法(吸入薬が中心)

長時間作用性β2刺激薬(LABA)

長時間作用性抗コリン薬(LAMA)

吸入ステロイド(ICS)+LABA/LAMAの併用

※ 症状や増悪の頻度に応じて吸入薬を組み合わせます。

● 呼吸リハビリテーション

•有酸素運動、呼吸筋トレーニング、栄養指導などを組み合わせ、日常生活能力(ADL)の維持・改善を目指します。

● 酸素療法(在宅酸素療法=HOT)

•安静時のPaO2が55mmHg以下またはSpO2が88%未満の場合、保険適用で在宅酸素療法が導入されます。

● ワクチン接種

•COPD患者は感染症に弱いため、インフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されます。

■ 予後と合併症

COPDは進行すると、日常生活が制限され、うつや不安障害を併発することもあります。

さらに、以下のような全身性の合併症を伴うことがあります:

•慢性呼吸不全

•肺高血圧症

•右心不全(コル・プルモナーレ)

•骨粗しょう症

•筋力低下、サルコペニア

•栄養障害(低体重)

また、肺がんとの関連性も高く、喫煙者では両疾患が併存することもあります。

■ 当院での対応

当院では、COPDの早期発見と進行抑制のため、下記を提供しています:

•スパイロメトリー検査(予約制)

•禁煙外来(保険診療)

•吸入薬の処方と使用指導

•呼吸リハビリの紹介

•定期的な経過観察と感染予防管理

「最近、階段で息切れする」「咳が長引いている」などの症状がある方は、早めのご相談をおすすめします。

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