いびき・無呼吸
いびき・睡眠時無呼吸症候群(SAS)について
― 眠っている間に進行する、見えない健康リスク ―
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◆ いびきは体からの警告サインかもしれません
いびきは、睡眠中に空気が通る上気道(鼻からのどにかけて)が何らかの理由で狭くなり、呼吸のたびに周囲の組織が振動することで生じます。
多くは「うるさい音」として捉えられがちですが、放置すると深刻な健康リスクを引き起こす「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の一部症状であることも少なくありません。
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◆ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる(10秒以上の無呼吸)または呼吸が浅くなる(低呼吸)状態を繰り返す病気です。
無呼吸の回数が1時間あたり5回以上(AHI≧5)で診断の対象となります。
主なタイプ
1.閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
上気道の物理的な閉塞により起こる。最も頻度が高いタイプ。
2.中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)
呼吸を司る脳からの指令が途絶えることによるタイプ(心不全や脳疾患と関連)
3.混合型
上記2つが混在するタイプ
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◆ SASの主な症状
睡眠中に見られる症状(自覚がないことが多い)
•大きないびき(特に間欠的に途切れるタイプ)
•呼吸が止まる・息苦しそうに寝ている
•寝汗、むせる、息を吸おうとしてあえぐ
日中に現れる症状(本人が自覚しやすい)
•日中の強い眠気(居眠り運転のリスクあり)
•起床時の頭痛、口の渇き、熟睡感のなさ
•集中力・記憶力の低下、仕事や学業への影響
•夜間の頻尿・中途覚醒
•情緒不安定・抑うつ傾向
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◆ SASが引き起こす合併症・リスク
無呼吸によって血中酸素濃度が繰り返し低下することにより、以下のような疾患のリスクが高まります:
•高血圧(治療抵抗性のことも)
•心筋梗塞・狭心症・心不全
•脳卒中・脳出血・認知機能障害
•2型糖尿病の発症リスク上昇
•肥満の悪化(SASと肥満は相互に悪影響)
•夜間突然死のリスク増加
•運転中や作業中の重大事故(業務・交通)
SASは「サイレントキラー」とも呼ばれるほど、無自覚で進行し、重大な疾患に結びつく可能性があります。
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◆ 検査方法について
当院では、以下の検査を用意しています。
簡易睡眠検査(自宅で可能)
•小型機器を使って就寝中の呼吸・いびき・酸素濃度などを測定
•保険適用
•病院に泊まる必要がない
精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査 / PSG)
•医療機関に宿泊し(紹介が必要)、脳波・眼球運動・筋電図・心電図なども含めた詳細な記録
•重症度や他疾患の鑑別に有用
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◆ 主な治療法
1. 生活習慣の改善
•減量(特にBMI25以上の方)
•飲酒の制限(筋弛緩作用で悪化)
•禁煙(鼻や喉の粘膜への炎症軽減)
•横向き寝(仰向けは気道が狭くなる)
2. CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
•睡眠中にマスクを装着し、一定の空気圧で気道を広げる
•中等度〜重度のSASに非常に効果的
•保険適用、在宅管理可能
3. 口腔内装置(マウスピース)
•軽症〜中等症の閉塞型に有効
•専門の歯科医で作成
•下あごを前に出し、気道を広げる仕組み
4. 外科的治療
•扁桃肥大、アデノイド、鼻中隔弯曲など解剖学的原因が明らかな場合
•手術(扁桃摘出、鼻中隔矯正術など)を検討
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◆ ご家族の指摘が受診のきっかけになることも
睡眠中のことは本人では気づきにくく、「いびきがひどい」「息が止まっていた」といった家族の指摘が最も有効な手がかりになります。
放置せず、早めの検査・治療を行うことで、健康リスクを大幅に下げることが可能です。
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◆ まとめ
•大きないびきや日中の眠気は、SASの重要なサインです
•SASは放置すると命に関わる合併症を引き起こすことがあります
•検査は自宅でできる簡易タイプもあり、負担は大きくありません
•治療により生活の質(QOL)は大きく改善します
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気になる症状がある方、ご家族のいびきが気になる方は、お気軽にご相談ください。